おとなの食育

■体をつくる間食のとり方

 ダイエットの大敵などといわれる間食ですが、とり方によっては筋肉や骨づくりに有効に働きます。その鍵となるのがたんぱく質です。食事でとったたんぱく質は、アミノ酸に分解されて臓器や組織へ運ばれます。
  アミノ酸は、まず小腸に運ばれ、消化酵素の原料として使われます。残ったアミノ酸は肝臓で使われます。そのため、食事からとるたんぱく質は、骨や筋肉には十分に届きません。そこで間食です。間食で高たんぱく質をとれば、アミノ酸は小腸と肝臓を素通りし、心臓を経由して骨や筋肉に届けられます。
  血液中のアミノ酸を骨や筋肉に取り込みやすくするには、インスリンが必要です。そこでインスリンの分泌を活発にするための砂糖と、低脂肪高たんぱく質食材を組み合わせた間食をとる――これでたんぱく質は効率よく骨や筋肉に供給されるというわけです。
  間食をとるのは午前 10 時か午後3時がベスト。低脂肪高たんぱく質の食材は、卵白、おから、スキムミルク、ゼラチンなど。油脂は使用せず、砂糖とこれらの食材を組み合わせ、オリジナルおやつを作って筋肉や骨づくりに役立てたいもの。これは、食事制限のない人が対象なので高血糖や糖尿病、腎臓病の人には当てはまりません。

参考文献/ダンベル先生のミサイル栄養おやつ健康法(主婦と生活社)鈴木正成著、 体脂肪がどんどん燃える「ヤセるタイミング」があった!(青春出版社)鈴木正成著、 実践的スポーツ栄養学(文光堂)鈴木正成著


■塩分の過剰摂取と骨の関係

 高血圧の原因ともなる、塩分の主成分であるナトリウムの過剰摂取。実は、骨にとっても悪影響を及ぼすのです。これは、ナトリウムのとりすぎが、カルシウムの排出を促 してしまうため。 血液中のナトリウムとカルシウムのバランスは一定に保たれています。しかし、塩分のとりすぎで血液中のナトリウムが増えると、そのバランスを保つため、骨に蓄えたカルシウムが血液中へ溶け出します。この状態が続けば、骨のカルシウ ム量はどんどん減少。塩分のとりすぎは高血圧だけでなく、骨粗そ鬆しょう症のリスクをも高めることに。

 厚生労働省が毎年行う国民健康・栄養調査では、ナトリウムは摂取過剰、カルシウムは摂取不足を指摘。日本人の大きなカルシウム源は野菜や豆類ですが、吸収率が牛乳・乳製品の 50 %に比べ 15 ? 30 %と低いため、不足になりがち。また、カルシウムの吸収を抑制するリンを含む加工食品のとりすぎもカルシウム不足を招きます。反対に日本人の食生活はナトリウムをとりすぎやすいのが特徴。味付けを薄味にするなど減塩対 策を心掛けて。また、塩分の多い加工食品を控えることは、ナトリウムの過剰摂取を防ぐだけでなく、カルシウムの吸収率も高めることにもなります 。

参考文献/骨粗鬆症を防ぐバランス献立集(新星出版社)、 田村哲彦・上村泰子著、骨粗鬆症からあなたを救う食事法(青春出版社)中島信治著、 骨の健康学(岩波書店)林 史著


■「甘さ控えめ」には注意

健康づくりやダイエットに役立つ食品を選ぶときに、目に留まるのが「甘さ控えめ」「糖分控えめ」「低カロリー」といった表示。どれも同じようなイメ ージで受け取りがちですが、健康増進法の栄養表示基準に従えば、意味しているものが違います。
甘さ=糖分、エネルギーではありません。甘さはあくまでも味覚表現なので、栄養表示基準の制約を受けません。つまり、甘さ控えめは、必ずしもエネルギーや砂糖の量が控えめである
ことを意味しません。
糖分控えめの場合は、栄養表示基準で、食品100g当たりの糖分含有量が5g以下、飲料の場合は100ミリリットル当たり2・5g以下と定めています。似たような言葉で低糖という表示も使われますが、「○○と比較して低糖」とある場合、比較する食品よりも糖分が100g当たり5g、飲料は100ミリリットル当たり2・5g以上少なければ、低糖と表示可能。糖分の含有量は問われません。
実際に含まれる糖分の量は、栄養成分表示をチェックする必要があります。「ノンシュガー」や「砂糖不使用」も砂糖は使っていなくても、他の糖分が使われている可能性も。
表示ルールを知り、表示に惑わされない食品の選択眼を身につけましょう。

参考文献/食品に栄養表示するときは… -栄養表示基準について-(改訂第5版)東京都福祉保健局健康安全室健康安全課発行、ここが変わった「新食品表示」ハンドブック(講談社)垣田達哉著
東京都消費生活総合センターホームページhttp://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/


■太りにくい食べ方

 肥満防止には、何を食べるのかと同時にどう食べるかということも大切です。1日3度の食事は、エネルギー消費のよい体を作ります。食事と食事の間があくと体は一種の飢餓状 態になり、エネルギーを蓄えようとします。このような状態では、摂取エネルギーは体脂肪としてたまりやすくなります。規則正しい食事をすることは、バランスよくエネルギーを消費する体を作ります。3食食べるといっても、残業などで夕食を夜遅く食べるのは太るもと。就寝時は脂肪の合成が盛んなので、就寝2?3時間前には食べ終わるようにします。
  食べるスピードも大切です。男性に多いのが早食い。食事をすると脳の食欲中枢が刺激を受け、30分ほどで満腹感を感じます。しかし、早食いの人は満腹感を得る前に多く食べてしまうことに。ゆっくり食べれば食べ過ぎないうちに満腹感が得られ、食べ過ぎ防止になります。食事の満足感は量だけでなく、さまざまな食材を味わうことでも得られるもの。単品料理が多い人は、おかずが複数そろう定食にすると満足度はアップ。
  エネルギーとして使われる順は、糖質、たんぱく質、脂質です。エネルギー源として一番使われにくい脂質の量をコントロールすることも忘れずに。

参考文献/内臓脂肪を減らす本(主婦と生活社)工藤一彦著、30歳からの「おりこう食材」ダイエット(実業之日本社)浜内千波著、栄養と料理(女子栄養大学出版部)2005.7月号


■貧血予防に「たんぱく質」を

血とは、血液中の赤血球の減少や、赤血球に含まれる血色素(ヘモグロビン)の量が少なくなった状態をいいます。女性に多い貧血の多くは体内の鉄分が不足し、ヘモグロビンの生産が不十分になる鉄貧欠乏性貧血です。
貧血は男性よりも女性に多く、鉄の必要量が多くなる成長期の子どもや妊娠中の女性は貧血になりやすいようです。また、スポーツなどで激しい筋肉運動をする人も、赤血球が早く壊されて鉄分が不足しがちに。
貧血予防には鉄分摂取とよくいわれますが、同様に重要なのがたんぱく質。なぜなら鉄分はたんぱく質と結合し、貯蔵鉄として肝臓などに蓄えられるからです。このように、造血作用にはたんぱく質が重要な役割を担っており、鉄分と一緒にとるのが効果的です。このほか、体内での鉄分の吸収をよくするビタミンCも、造血効果を高めるために必要な栄養素です。
牛や豚の赤身肉、マグロやカツオなどの魚、豆腐などの大豆製品が、鉄分を多く含むたんぱく質源です。
同じ鉄分でも、肉・魚などの動物性食品に含まれるヘム鉄のほうが、野菜・海藻など植物性食品に含まれる非ヘム鉄より、腸での吸収率が高いとされます。これらの食品を上手に組み合
わせて摂取しましょう。

参考文献/トートラ人体解剖生理学 からだの構造と機能(丸善)佐伯由香・黒澤美枝子・細谷安彦編訳、最新版女性の医学(主婦の友社)野末悦子著、妊娠中の食事と栄養BOOK(成美堂出版)堀口貞夫監修


■加工食品と一緒にとりたい食品

 あまり手を加えないですむ便利な加工食品は、現代人の食生活に深く浸透しています。缶詰やパン、インスタント食品、レトルト食品、冷凍食品などはすべて加工食品です。加工食品が問題となるのは、食品添加物や食感を良くするための動物性脂肪の使用、塩分や糖分が多い、などの理由によります。
 ビタミン類の含有量が少ないため、加工食品の使用頻度が高い家庭では、ビタミン摂取率が低くなる問題も。また、カルシウムの吸収を妨げるリンが多く、骨の健康にも影響します。
 加工食品の過剰摂取は栄養バランスを崩すもとですが、全く使わない生活は現実的ではありません。加工食品を食べる時は、ビタミン類を多く含む野菜を同時に摂取することが肝心。
 例えば、インスタントラーメンにはモヤシやキャベツな どをのせる、レトルトのカレーはゆでたニンジンやブロッコリーを加える、パスタのソース類を使う時はいためたキノコやタマネギなどを加えるといった工夫で、不足しがちな栄養素を補給。また、カルシウムを補う牛乳、小魚、チーズなども一緒に。さらに、摂取した食品添加物を体外へ排出する働きを持つ食物繊維が豊富なリンゴ、バナナ、ミカンなどの果物を食後にとるのも一つの方法です。

参考文献/加工食品 じょうずな利用と可能性を考える(女子栄養大学出版部) 女子栄養大学栄養科学研究所編、 安全に食べる加工食品(誠文堂新光社)増尾清著