健康豆知識
【ロングフライト血栓症】
水分の摂取と足の運動で予防
1980−90年代以降、よく話題にのぼるようになったロングフライト血栓症。医学的には「肺動脈血栓塞そく栓症」「深部静脈血栓症」が正式な病名です。
この病気は、下肢に血のかたまり(血栓)ができ、その一部が血流にのって心臓を経て肺へ到達し、肺の動脈をふさいでしまうというもの。軽い場合は、脚のむくみや痛みなどの症状が出ます。しかし、重症になると、飛行機を降りたとたん息切れや動悸、呼吸困難などを起こしたり、心筋梗こう塞そくと同じように胸が痛んだりする症状が起きます。最悪の場合、死に至るというケースも。
機内では長時間座ったままの状態を強いられることが多く、脚の血液の流れが悪くなるのが大きな原因。
また、機内は乾燥しており、肺と皮膚から失われる水分は5時間のフライトでは500 cc 、 10 時間では800 cc にもなり、血液の濃度が高まりやすくなることも血栓ができやすくなる要因の一つです。当初この病気は、国際線のエコノミークラスの乗客に多発したことから、エコノミークラス症候群と呼ばれていました。現在は、エコノミークラスだけでなく、ビジネスクラスやファーストクラスの人、長距離バスの乗客などさまざまなケースで発症することがわかってきており、旅行者血栓症とも呼ばれています。
予防法としては、まず水分をこまめに摂取すること。ミネラルウオーターや薄いお茶がいいでしょう。
アルコールやコーヒーなどカフェイン入りの飲料は、利尿作用がありトイレが近くなります。水分不足を招くので控えめに。座ったままでつま先やかかとの上げ下げ、足の指を広げるといった運動は欠かせません。
すぐに立って歩ける通路側の席を選ぶことも予防のコツ。また、脚の血行を促す弾性ソックスを利用してもいいでしょう。機内で過ごす際は、膝裏の血管を圧迫するので、脚は組まないようにします。体をしめつける服や下着は避け、衣服のベルトは緩めましょう。多くは到着間際の機内や到着した空港で発症しますが、しばらくして自宅で発症することもあるので注意が必要です。
参考文献/日本旅行医学会ホームページ 、
海外旅行医学ハンドブック(山と溪谷社)篠塚規著、
医療情報季刊誌アニムス(アニムス刊行会) 2004.N o .35 、
栄養と料理(女子栄養大学出版部) 2003. 2月号